
高倍率ズームレンズで星空を撮影したら、点が5個しか写らなかったよ。
何でこうなるの?
星を写したいならレンズ選択が重要
以前、「星空撮影の成功は環境で9割が決まる」という話をしました。
では、あと1割は何かというと機材や技術となります。
機材の中でも写りに大きく影響するのがレンズの選択です。
環境が良く満天の星空が広がっていても、レンズの選択を誤ると思った通りに星は写りません。
では、どういった点に注意すればいいのでしょうか?
そのあたりを解説します。
レンズは明るい方が有利
星をたくさん写したいならレンズは明るい方が有利です。
この場合の明るいレンズとは開放f値が小さいレンズです。
暗いレンズを明るくすることは出来ませんが、明るいレンズの絞りを操作して暗くすることは出来ます。
暗いレンズでも高感度で撮ればいいじゃないか!?
そう言われてしまえばお終いなのですが、一般的に高感度になればなるほど写真にノイズが入ります。
これは、点光源を撮影する星空にとって、あまり良いことではありません。
ですから、出来る限り低感度で明るいレンズ(開放f値が小さいレンズ)を使用した方が良いのです。
レンズの前面や側面、仕様書には開放f値(絞りを開ききった場合のf値)が表示されています。

写真の機材ですと 1:2.8と書いてありますので開放f値は 2.8です。
これが意味するのは、レンズの正面から入る光を 1とすると、レンズを通り過ぎて出る光は 1/2.8 という事です。
レンズの中を通り過ぎる間に光の量は随分減るものです。

これが1:1となると、レンズから入る光とレンズを通って出る光が同じという事です。
まあ、そんな明るいレンズはほとんどありませんけどね。
レンズの中を通る間に光が減衰するレンズほど、被写体は暗く写ります。
星は非常に光の弱い被写体です。
ですから、暗い星はレンズ内で光が減衰し全く写らなくなります。
明るいレンズと暗いレンズで比較
光の減衰については実際に比較すると分かりやすいです。
という事で、明るさの違う2本のレンズを比べてみました。


どちらもシャッター速度は10秒、ISO1600、絞りは開放で撮影しています。
SIGMA18-250mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSMは18mm焦点で撮影しましたので、開放時のf値は3.5です。
また、このレンズはAPS-Cフォーマットですので、フルサイズ換算すると焦点距離27mmのレンズとなります。
さて、
ゴチャゴチャと数字を並べましたが、単純にこう思ってください。
f1.4とf3.5で星の写りがどう変わるか。
明らかにf1.4の方が沢山星が写っていますね。
折角ですので部分的に拡大してみましょう。


あ、ノイズは気にしないでくださいね。
アプリケーションで簡単に除去できます。
比較すると、写っている星の数が全く違うのが分かっていただけるかと思います。
暗いレンズを使うぐらいならスマホ撮影もアリ
個人的に、星の撮影にはデジタル一眼をおススメしていますが、例のように暗いレンズ(f値の大きなレンズ)を使うぐらいならスマホでの撮影もアリだと思います。
それは、スマホの高感度性能とレンズの明るさ。
最近のスマホは高感度性能が上がっていますし、レンズも明るいです。
参考までに現在売れ筋のスマホを並べてみました。
製品名 | カメラ画素数 | 焦点距離(35mm換算) | f値 |
---|---|---|---|
AQUOS sense6 | 4,800万画素 | 26mm | f1.8 |
OPPO Reno5 A | 6,400万画素 | 26mm | f1.7 |
Google Pixel 6 | 5,000万画素 | 24mm | f1.9 |
Xperia 5 III | 1,220万画素 | 24mm | f1.7 |
Galaxy S22 Ultra | 10,800万画素 | 23mm | f1.8 |
iPhone SE (第3世代) | 1,200万画素 | 28mm | f1.8 |
iPhone 12 | 1,200万画素 | 26mm | f1.6 |
注目していただきたいのはf値。
そのスマホもメインカメラはf値が1.6~1.9と明るいです。
これを考慮すると、デジタル一眼カメラと暗いレンズの組み合わせで撮影するより、スマホの明るいレンズで撮影した方が良い場合があります。
比較的新しいスマホですと高感度性能も良くノイズも少ないです。
ただ、スマホの多くに採用されている1/2.3型イメージセンサーで、点光源である星をどこまで再現できるかは実際に撮影しないと分かりません。
ダメだと決めつけずに、一度トライしてみても良いかもしれませんね。
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