
スマホで星空を撮影したら真っ暗に!
高いスマホじゃないと星空は撮れないの??
星空撮影の成功は環境で9割が決まる
前回の記事で「星空撮影の成功は環境で9割が決まる」という話をしました。
星を撮影するために重要なのは高性能なカメラでもなく、高価なレンズでもなく、iPhone14でもなく、いつ、どこで、どのような状況で撮影するかが重要だという事です。

そのうえで、あとの1割はどのような機材で撮影するかです。
ですから、環境が整っていればスマートフォンでも星は撮影可能なのです。
今回は、スマートフォンで星空を撮影する方法について解説します。
撮りたいものを決める
どんな撮影においてもそうですが、撮りたい写真を決めるのが重要です。
最終的にどのような写真にするかという目標ですね。
これは前回もお話ししたとおりです。

撮りたいものも決めず、適当に撮っていては思っているような写真に仕上がりません。
ですから目標を決めるのは重要なのです。
<目標とする写真>

では、今回はこのような写真を目標にするとします。
まずは「星を撮る」という事で、星空だけの写真です。
この写真を目標にした場合、どういったものが必要でどういった撮影方法が適しているか解説します。
撮影に必要な物
撮影に必要な物と、あったらいい物を以下に記載します。
必要 スマートフォン
あったらいいマニュアル撮影できるアプリ
必要 三脚とスマホホルダー
あったらいい懐中電灯
それぞれ見ていきましょう。
スマートフォン
スマートフォンは現在お持ちのものでかまいません。
出来れば最新機種の方が良いのですが、一定の性能を満たしていれば古くても問題ありません。
まずは、説明通り撮影してみて性能の限界を感じたり、不具合があるようでしたら、この機会に機種変更するのも良いかもしれません。
ただ、その際情報に踊らされて割高なスマートフォンを買わないように注意したいです。
マニュアル撮影できるアプリ
星空はカメラ任せで撮影するのが難しい被写体です。
基本的にはシャッター速度とISO感度を手動で操作できるアプリがあると良いです。
スマートフォンに付属するカメラアプリでもかまいません。
マニュアルモードでシャッター速度とISO感度が手動設定できるか確認してみましょう。
もし、付属のカメラアプリで上手くいかないならProCam X (Liteバージョン)をお勧めします。
Android用のみですが、無料で使える範囲で充分性能を満たします。
三脚とスマホホルダー
三脚はデジタル一眼カメラの時と同様、スマートフォンより重いものを使用してください。
スマホ用の簡易三脚や、自撮り棒と一体になったようのものは使いものになりません。

安いもので結構ですので、デジタル一眼カメラ用の三脚を使用しましょう。
スマホホルダーは、
スマートフォンをしっかり固定できること。
三脚用のネジ穴が付いていること。
できれば縦横どちらでも構えられること。
これらを基準に選んでください。
性能を満たせば安い物でもかまいません。
懐中電灯
星空を撮影する際は真っ暗な中で撮影することになります。
手探りでも三脚等を操作できるなら良いのですが、これが案外難しいのです。
ですから、懐中電灯は有った方が良いです。
大きなものは不要。
ペン型のLEDライトでかまいません。
ストラップで首からぶら下げておくと便利です。
撮影の方法
機材が準備出来たら実際に撮影です。
大前提として、「撮影の環境が整っている」ことを再確認してください。
「撮影しに行ったけど月が邪魔でした」では何の意味もありません。
環境が第一なのです。
では準備から撮影までの注意点を追って行きましょう。
三脚の設置
三脚は安定した場所に設置しましょう。
どれだけ高性能な機材でも、土台が揺れてしまえば力を発揮できません。
具体的には、幹線道路の近く、線路の近く、建物の屋上、バルコニー、橋の上、車の上、船の上、芝生など僅かでも揺れる場所は避けてください。
街の灯りがない場所で撮る
撮影は街の灯りが無い場所で行います。
街灯や建物の近く、車や電車の光など、とにかく人工的な灯りが無い場所で撮影してください。
カメラのレンズが光の方向に向いていないからといって、油断してはいけません。
カメラの背面に街灯があるだけで、星空撮影の障害になります。
スマホとスマホホルダー、三脚の固定はしっかりと
スマートフォンとスマホホルダー、三脚の固定はしっかりと行ってください。
これがゆるいと、ブレの原因となります。
また、クイックシューやカメラスライダーなど、グラつきの原因となるものも使用しない方が良いです。
多少揺らしてみてグラグラと揺れなければ問題ありません。
スマホを落下させないようにご注意を!
ピントはマニュアルで合わせる
ピントは基本的にマニュアルで合わせます。
ほとんどのスマートフォンはオートフォーカスで星にピントを合わせることが出来ません。
ですから、マニュアルフォーカスでピントを合わせます。
操作はカメラアプリを使います。
先ほど紹介したProCam X (Liteバージョン)を例に説明します。

下部メニューを右へスワイプ。
「F」をタップ。
「M」をタップ。

フォーカスダイヤルを右へスワイプ。
距離が「MF無限」となれば完了。
カメラアプリによって操作は違いますので、マニュアルフォーカスで無限(∞)にする方法を覚えておきましょう。
スマートフォン標準のカメラアプリで無限遠に設定できる場合は、そちらで操作しても問題ありません。
ISOは1600以上
多くのスマートフォンに搭載されているカメラは、絞りの値(f値)が変更できません。
ですから露出の調整はISO感度とシャッター速度で行います。
まずはISO感度の設定から。
ProCam X (Liteバージョン)を例に説明します。

下部メニューの「ISO」をタップ。
メニュー上部の数字を右側へスワイプ。
該当のISO感度(数字)をタップ。
ISO感度はとりあえず仮で1600に設定します。
この設定で実際に撮影してみて、明るさやノイズの出具合を見て調整します。
シャッター速度は4~8秒程度
シャッター速度は4~8秒ぐらいに設定してください。
これ以上速いと露出が不足しますし、これ以上遅いとレンズの焦点距離によっては星が流れてしまいます。
同じく、設定手順はProCam X (Liteバージョン)を例に説明します。

下部メニューの「S」をタップ。
シャッターダイヤルを右へスワイプ。
シャッター速度を4~8sに設定する。
これで露出の設定は完了です。
自身が使っているスマートフォンのカメラは、シャッター速度が0.7秒までしか設定できませんでした。
このままでは露出が不足しますので、ISO感度を上げて調整する必要があります。
ここからは、実際に撮影したものを確認しながら調整すると良いでしょう。
製品毎に限界値は違いますので、ご自身のスマートフォンで調整してみて下さい。
露出の考え方
スマートフォンのカメラもデジタル一眼カメラと露出の考え方は一緒です。
例のような写真を撮影する場合、基本的な露出の数値は、
シャッター速度8秒
絞り(f値)2.8
ISO感度1600
となりますので、ここから調整していきます。

例えば、自身のスマートフォンは絞り(f値)が2でした。
この設定ですとf値2.8より一段階明るいです。
ですからシャッター速度を1段階速い4秒や、ISO感度を一段階低い800に変更しても同じ露出となります。
シャッター速度を速くすると、星が流れるリスク、ブレるリスクが減ります。
ISO感度を低くすると写真のノイズが減らせます。
また、自身のスマホはシャッター速度が0.7秒までしか対応できません。
このままですと、シャッター速度4秒に満たず、確実に露出不足になるため、星はほとんど写りません。
絞りの値は2でシャッター速度は0.7秒までですので、選択肢としてはISO感度を調整するしかありません。
ISO感度の調整ついては1段階ずつ比較すると分かりやすいです。
絞りの値(f値)2.8 → 2
これによりシャッター速度は4秒にできます。
今度はシャッター速度を速くし、ISO感度を高くします。
シャッター速度2秒 → ISO3200
シャッター速度1秒 → ISO6400
シャッター速度0.7秒 → ISO9142ぐらい
ということで、絞り(f値)2、シャッター速度0.7秒の場合、ISO感度は9142ぐらいにすると良いという事です。
あくまで計算上の話なのでご了承ください。
撮影はセルフタイマーを使う
星の撮影は振動にシビアです。
地面の揺れ、風、大きな音・・・僅かな振動でも撮影に影響します。
シャッターボタンを押すだけでもスマートフォンが僅かに動き、ブレが発生します。
これを防いでくれるのがセルフタイマー機能。
シャッターボタンを押したら、数秒後に撮影してくれる「記念撮影でお馴染み」の機能です。
ブレ防止のため、星空の撮影にもセルフタイマーを使用しましょう。
少なくとも、指で押さえた際の振動は防いでくれます。
ナイト(夜景)モードが無いから撮影できないは嘘
基本的に条件さえ満たせば、スマートフォンでも星空は撮影できます。
実際、写る根拠が分かっている人達は、スマートフォンのカメラを限界まで使って天体写真を撮影しています。
ナイトモードの有無で、星空撮影の可否を判断してしまう人がいますが、非常に勿体ないです。
正しい知識と、ちょっとした道具の追加で星空撮影は可能なのです。
是非ともお試しください。
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