NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S
ヨンニッパと呼ばれる400mm f/2.8。
焦点距離400mmの超望遠にf/2.8という大口径を生かし、高い解像度と美しいボケが特徴のレンズとなっています。
大口径になればレンズは長く、重くなる。
もちろん取り回しも悪くなる。
しかし、ヨンニッパにはヨンニッパにしか撮れない世界があるのです。
主に野鳥や航空機の撮影に用いられ、その解像度から「重くても良いものが撮りたい!」という人向けのレンズといえるでしょう。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR SはNikonがZマウント用に開発したヨンニッパです。
発売は2022年2月18日と比較的新しく、最新の技術を満載した高性能なヨンニッパとなっております。
写真を撮る人なら一度は憧れるであろうバズーカ砲レンズのひとつ。
そんなNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sについて、徹底解剖してみましょう。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sの仕様
まずはNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sに仕様について確認。
【NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sの主な仕様】
対応マウント | Nikon Zマウント |
レンズタイプ | 単焦点(1.4倍テレコンバーター内蔵) |
フォーマット | フルサイズ対応 |
レンズ構成 | 19群25枚 |
絞り羽根数 | 9枚 |
焦点距離 | 400mm/560mm |
最短撮影距離 | 2.5m |
最大撮影倍率 | 0.17倍 |
手ブレ補正機構 | 〇 |
防塵 | 〇 |
防滴 | 〇 |
本体寸法 | 380×156mm |
本体重量 | 約2,950g |
付属品 | レンズキャップ LC-K105 後キャップ LF-N1 レンズフード HK-42 レンズストラップ LN-3もしくはLN-4 レンズケース CL-3 |
特筆すべきところは1.4倍のテレコンバーターが内蔵されたことと、本体3kgを切る重量です。
こういった点も含めて気になる点を順に解説します。
×1.4テレコンバーター内蔵のレンズ
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S最大のウリと考えるのは1.4倍のテレコンバーターを内蔵していることです。
これにより、
焦点距離400mm 開放絞り値f/2.8
焦点距離560mm 開放絞り値f/4
という2通りの使い方が出来ます。
ヨンニッパとゴーヨン(500mm f/4)が合体したようなイメージですね。
もちろん、今まででもテレコンバーターを後付けすれば同様の効果は得られたのですが、NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sのすごい所は、テレコンバーターを切り替えスイッチひとつで瞬時に切り替えられることです。
これが非常に使いやすい。
ボディからレンズをいったん取り外す必要もありませんし、テレコンバーターによる画質劣化もそれほどありません。
ズームレンズを操作する感覚にも似ています。
実際に切り替える様子はこんな感じ。
一瞬で切り替わりますのでレンズを交換する手間や、ダスト対策に気を使う必要もありません。
ストレスなし!
高性能なテレコンバーターを内蔵することによって、「2本のレンズを1本にまとめてしまった」高機能なレンズ。
さらに1.4倍や2.0倍のテレコンバーターを外付けすることによって、焦点距離を伸ばすことも出来るのです。
400mm f/2.8 と 560mm f/4の描写
テレコンバーターを使用すると画質が劣化するのは仕方が無い事。
ただ、NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sの内蔵テレコンバーターはそれほど画質が劣化しません。
ココがすごいところ。
では、絞り値ごとに比較してみましょう。
左が400mm、右が560mmです。
どちらも開放からよく解像します。
とはいえf/8あたりと比較すると、若干の甘さが感じられます。
これは仕方がない。
同じ距離から撮影していますので単純比較は難しいのですが、テレコンバーターを使用することによる極端な画質の劣化はありません。
このあたりはNIKKORシリーズのテレコンバーターから考えると大きく進化したと思います。
本当の意味で「1本で2本分楽しめるレンズ」といえます。
参考までにNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sの開放描写はこんな感じ。
輪郭のシャープさとか発色とか、比較してしまうと随分足りないことが分かります。
手ブレ補正・VRの能力
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sはレンズシフト方式VR機構を内蔵したレンズです。
これにより5.5段の手ブレ補正効果が得られます。
また、カメラボディー内のセンサーシフト方式VRと、レンズ内のレンズシフト方式VRが連動してより高い補正効果を発揮するシンクロVRにも対応しています。
では、その手ブレ補正能力について見てみましょう。
【テスト条件】
使用ボディ:NikonZ8 ボディ内手振れ補正(Nomal):ON 中央部分を拡大
【結果】
シャッター速度1/13秒(5段分)までは問題なく使える。 シャッター速度1/6秒(6段分)は手ブレ補正効果が得られるカットと得られないカットが半々ぐらい。 カタログスペックで手ブレ補正5.5段分というのは、信頼が出来る値だと考える。 構え方や筋力にもよるので、個人により多少は前後するものと思われる。
AFはやっぱり速い
さすが最新のヨンニッパ。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR SのAF速度は速いです。
普通に撮る分にはストレスなし。
テレコンを使っても速度はほとんど変わりません。
分かり易い例として、
近距離(約5m)から背景(約50m)へピントが移動させてみます。
まずは内蔵テレコンバーター無し(焦点距離400mm)での動作。
逆の動きを見てみましょう。
背景(約50m)から近距離(約50m)へピントが移動させてみます。
一瞬迷うように見えますが爆速で動作しているのが分かります。
被写体によって迷うのはNikonミラーレスの特徴かも・・・
そして内蔵テレコンバーターあり(焦点距離560mm)での動作。
400mmの場合と比較すると若干遅くなったようにも感じますが十分速いです。
内蔵テレコンバーターを使ったからといってモタつくことはありません。
非常に速いです。
では、以前行った「AF速度比較テスト」でも比較的成績の良かったAi AF-S Nikkor ED 500mm F4D II (IF)をみてみましょう。
うん、速いことは間違いないのですがNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR SのAF速度を見た後ですと若干遅く感じてしまいます。
続けて他の製品も見てみましょう。
NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VRのAF速度です。
焦点距離500mmでの動作状況。
少々もっさり感が出ましたね。
しかし、お値段から考えると十分がんばっているかと思います。
最後にNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR SのAF速度。
焦点距離400mmでの動作状況。
こちらもずいぶん遅く感じてしまいます。
最後にもう一度NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR SのAF速度を見てみましょう。
速い。
AFの速度については”さすがヨンニッパ”と言いたくなるほど違います。
手持ち撮影がギリギリいける重量
こういった超望遠レンズで足かせとなるのが、その大きさと重さ。
特に重さは手ブレに直結するため、大口径超望遠レンズの撮影を難しくする要因の一つといえます。
こういったレンズは三脚や一脚が必須なのですが、NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sは大きさのわりに軽く造られています。
今までNIKKORの大口径超望遠レンズを使っていた人なら、その差に驚くでしょう。
本体重量2,950gでボディなどを合わせても4kg弱。
旧製品が本体重量3,800gですから、1kg近く軽くなっています。
【ヨンニッパ・寸法と重量、旧製品との比較】
製品名 | 本体寸法 | 本体重量 |
---|---|---|
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S | 156×380mm | 2,950g |
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8E FL ED VR | 159.5x358mm | 3,800g |
AF-S NIKKOR 400mm f/2.8G ED VR | 159.5x368mm | 4,620g |
この軽さは大きな武器といえます。
撮影時の取り回しはもちろん、運搬時の重量削減にもなります。
三脚や一脚を使用する際もひとまわり小さく軽い製品が使えるという点でも、製品の選択肢が増えるため有利にはたらきます。
良いことずくめの軽さ。
他メーカーは既に3kg切りのヨンニッパを発売しており、NIKKOR Zのヨンニッパは後発となります。
同じく3kg切りのヨンニッパで他メーカーに追いつくどころか、×1.4のテレコンバーターを内蔵してこの重量に収めてしまいました。
この点についてはメーカーの苦労が伺えます。
これより上が無い400mmレンズ
最新技術をギュウギュウに詰め込んだNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sは今のところ最高のヨンニッパといえます。
クリアな描写に速いAF、手持ちできそうなほど軽い筐体に×1.4のテレコンバーターまで内蔵させて、望遠レンズに欲しいものが全て詰まっています。
あとはお値段!
軽自動車が買えてしまうこの1本について、その価値を見出すのはアナタかもしれない。
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