本格的なカメラで写真を撮る人なら一度は憧れる大口径超望遠レンズ。
スポーツ中継などでチラッと映るバズーカ砲のようなレンズのことです。
「使ってみたいけどお値段が…」
そうなんです。
大口径超望遠は高い!
とんでもなく高い!
趣味で買うには高すぎる。
でも使ってみたい。
ということで、利用したのはマップレンタル。
マップレンタル
カメラやレンズなどの撮影機材を貸し出してくれるサービスです。
「試しに使う」とか「1回だけしか使わない」なんて場合はこれで十分ですね。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S
今回レンタルしたのはNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S。
焦点距離:400mm
開放f値:2.8
いわゆるヨンニッパと呼ばれるレンズで、大口径超望遠レンズの頂点のひとつです。
長いですね。
大きいですね。
おまけに×1.4テレコンバーター内蔵で560mm f4としても使える!
お値段は……
気が向いた人はお調べください。
決して趣味で所持できるお値段ではありませんので。
高い物には高いなりの理由がある
焦点距離400mmだけを見ると、今時の廉価超望遠ズームレンズでも使えたりします。
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMやNIKKOR Z 28-400mm f/4-8 VRなんかが該当しますね。
ですから、このレンズに関しては「焦点距離400mmがスゴイ!」というわけではありません。
注目すべきポイントは開放f値2.8という明るさ。
この明るさを確保するために、
・レンズの直径は大きく
・筐体は丈夫に
・大きなレンズを動かすためにAFモーターは強力に
なるのです。
大口径超望遠レンズが高価になる理由は、これらを解決するために先端の技術と材料を用いるためです。
決してNikonが暴利を貪っているわけではありません。
では、Nikonが先端技術を用いて作り上げたヨンニッパがどれほどのものか。
実際にトラックイベントで使用しながらその性能を確認してみます。
ボケ量はバケモノ級
大口径超望遠レンズの魅力といえば浅い被写界深度を利用した背景ボケ。
被写体にしっかりピントを合わせ、背景をボカすことにより、「何を写したいか」がハッキリした写真となります。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sについても大口径超望遠レンズ特有の美しいボケを楽しむことが出来ます。
特に開放で撮影するとその柔らかいボケ味に驚かされるでしょう。
同じ焦点距離が使えるNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sと比較すると、その差は歴然です。
今回、撮影したトラックを例にとってみましょう。
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sがトラック1車分(約15m)で、なんとなく背景ボケを感じられるのに対し、NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sではトラック半車分(約7.5m)で背景ボケを感じることが出来ます。
例のように2台トラックが並んだ場合が分かり易いです。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR S(開放)の描写です
右のトラックにピントを合わせると、半車分後ろにある左のトラックはボケているのが分かりますね。
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sのように開放f値が5.6あると、全体的にしっかりと写ってしまいます。
ボケによって得られる効果としては「何が主役か分かり易い」ということです。
主役を構図の中でハッキリと決めることが出来るということですね。
この距離で、これだけボケるレンズはほとんどありません。
稀有な存在といえます。
もちろん、絞り込めば両方しっかり写すことも可能。
写真の選択肢を増やすという意味で、このボケ量は強力な武器となるのです。
画質の良さは気が付かないほど
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sは画質が良いレンズです。
それは「画質の良さに気が付かないほど」自然です。
例えば逆光耐性。
夕方、逆光の場面で、ゴーストやフレアは皆無でした。
”逆光耐性が強い”とされるレンズでも、トラックのヘッドライトなど強い光には弱いことがあります。
特にちょっと光軸を外した角度が苦手の様子。
たまたまかもしれませんがNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sに関しては、そういった場面でのゴーストは確認できませんでした。
正直、自然すぎて凄さが分からないという感想です。
また、大口径レンズにありがちな四隅の光量不足も確認できませんでした。
夕方や室内など、全体的な光量が不足する場合に四隅に影が写ることが多いのですが、そういったものは見られません。
この点についても自然すぎて逆に気が付かないかもしれません。
AFは速く、ほぼハズレなし
一般的に超望遠レンズはAFが遅くなりがちです。
しかし、飛行機や野鳥など動きの速い被写体を追うためには、動きの速いAFが求められます。
廉価超望遠レンズなどはこういった部分がコストカットの対象となるのですが、大口径超望遠レンズはAF駆動部分にも妥協はありません。
性能重視で作られています。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR SについてもシルキースウィフトVCMを採用しており、体感でのAF速度は超望遠レンズで最速レベルです。
更に、比較的暗めの場合であってもAFの精度は高いです。
NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは晴天時の日影(住宅の軒天部分など)や夕方にAFが迷うことがありますが、NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sではそういったことはありませんでした。
※どちらもNikonZ8使用の場合
日没時刻なら国道を走行する車両を十分に追うことが出来ます。
速くて、ほぼハズレなし。
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR SのAFは、少々悪い条件でも高い性能を発揮してくれました。
トラックイベントの撮影では400mmが良い
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sには×1.4テレコンバーターが内蔵されています。
これはスイッチ一つで焦点距離を1.4倍(焦点距離560mm)にできるスグレモノなのです。
ズーム化すると手持ちできなくなるほど巨大になる大口径超望遠レンズ。
簡単に焦点距離を伸ばす方法としてテレコンバーターを装着することが多いのですが、思い切って内蔵してしまったのがNIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sなのです。
内蔵テレコンバーターは、飛行機や野鳥などを大きく写す際に便利です。
しかし、トラックイベントではあまりその恩恵を受けない感じます。
御承知のとおりトラックは大きいため、全体を写そうとすると離れる必要があります。
部分切り取りでも同様。
ただ、日本の敷地事情、道路事情を考えるとそれほど離れて撮影できる場所はありません。
あったとしても限られた構図、瞬間を切り取る形になるでしょう。
そういった事情を考慮すると、トラックイベントの撮影で使いやすいのは400mmまでです。
それを越えると途端に撮影は難しくなります。
ひとつのイベントで使っただけですので、別の場面では内蔵テレコンバーターが活躍するかもしれません。
あくまで周辺環境、状況に応じてということになります。
規格外すぎて感覚がおかしくなるレンズ
NIKKOR Z 400mm f/2.8 TC VR Sは様々な点で規格外なレンズと感じます。
・焦点距離:400mm
・開放f値:2.8
・内蔵テレコンバーター使用で焦点距離560mmが可能
・高性能なAFモーター
・5.5段分の手ブレ補正(シンクロVR可能)
・防塵防滴仕様
・これでレンズ重量3kg弱
内蔵テレコンバーターを使用すると560mm f4というひとつ長い超望遠レンズとしても使用できます。
これだけの画質と機能を有してレンズ重量は3kg弱。
手持ちでも十分撮影可能です。
画質と機動性を兼ね備えた規格外の1本といえるでしょう。
機会があれば触ることをお薦めします。
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