SIGMA 14mm f1.8 DG HSM
20年ほど前まで、シグマレンズは安かろう悪かろうの代名詞でもありました。
しかし2010年代に入りレンズのラインナップをArt、Contemporary、Sportsシリーズにライン形成すると事態は一変。
メーカー純正を超える性能と、純正には無いスペックの製品を次々とリリースするのでした。
今回、お試しする14mm f1.8 DG HSMはArtシリーズの一角です。
ひたすら性能を追求し焦点距離14mmのデジタル一眼カメラ用レンズで世界初の開放値f1.8を実現しました。
ニコン純正の、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDより1.5絞り分明るいf1.8の世界。
どのように違うのか撮り比べてみることにします。
双方のスペックを比較
シグマ 14mm f1.8 DG HSMと、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDを仕様書で単純比較してみます。
項目 | シグマ 14mm f1.8 DG HSM | AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED |
---|---|---|
メーカー | シグマ | ニコン |
レンズタイプ | 単焦点 | 広角ズーム |
焦点距離 | 14mm | 14-24mm |
絞り羽数 | 9枚 | 9枚 |
f値 | 1.8 | 2.8 |
最短撮影距離 | 0.27m | 0.28m(0.3m/18mm未満の場合) |
防塵 | 有り | 無し |
防滴 | 有り | 無し |
手振れ補正 | 無し | 無し |
レンズ内モーター | 有り | 有り |
重量 | 1230g | 970g |
発売日 | 2017年 7月28日 | 2007年11月30日 |
特筆すべきは開放でf1.8という明るさ。
これがどの程度撮影に影響するのか、また開放での描写はどうなのか、気になるところです。
実際に撮影したものを比較(開放撮影)
さっそく撮影してみました。
まずは開放時の写真です。
ピントは手前に合わせています。
開放で撮影すると周辺部が光量不足になる事があるのですが、今回のテストでは両製品ともほとんど見られず良好な結果となりました。
パッと見で違いが分かるのは背景のボケ味でしょう。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMは、開放f値が1.8というだけあってボケが大きいです。
分かりやすいように背景部分を拡大してみます。
こう比べると違いますね。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMの大きなボケ。
ご確認いただけましたでしょうか。
若干流れているようにも見えますが、これもボケの味なのかもしれません。
次は流れを見てみましょう。
流れはレンズの口径が大きく明るいレンズほど起こり易いとされ、周辺部が文字通り流れたように見えます。
中でも超広角レンズは流れが起こりやすいとされています。
確認のため、写真の左下を拡大表示します。
どちらも良好で流れはほとんど気になりません。
設計の古さ(シグマ 14mm f1.8 DG HSMより10年古い)と、光学的に不利なズームレンズであることを考えると改めてAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDのすごさが分かります。
では、もう一つ。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMの、f値を2.8にしてみましょう。
これでAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDの開放と明るさは同じになります。
ピントが合っているであろう部分を切り取っています。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMのf値を1.5絞り分、絞りましたのでシャープネスが違います。
開放で撮影するとどうしても描写が甘くなります。
ですから、同じ条件なら1.5段階絞ることが出来るシグマ 14mm f1.8 DG HSMが有利です。
実際に撮影したものを比較(絞り込み撮影)
両製品の大きな違いは開放時のf値。
しかし、実際の撮影ではある程度絞り込むことが多いと思います。
ではf8にした場合の描写を比較してみましょう。
ここまで絞り込むと両製品の描写に大きな違いはありません。
ただ一点気になるのは「樽型歪み」
背景のブロック塀にご注目ください。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMがほぼ一直線であるのに対し、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDは若干円弧を描いているように見えます。
これが樽型の歪み。
レンズの特性ですから仕方がないといえば仕方がないのですが、こういった症状が出ることは頭に入れておいた方が良いと思います。
実際に撮影したものを比較(最短距離での撮影)
この2台のレンズは最短撮影距離が違います。
シグマ 14mm f1.8 DG HSM→0.27m
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED→0.3m(18mm未満の場合)
これが撮影にどう影響するか比較してみます。
被写体との距離の差はわずか3cmの差ですが、超広角の世界では大きな違いが生まれます。
また、接写すればするほど被写体と背景の差が大きくなるため、ボケ味も大きくなります。
ですから、綺麗なボケ味を作るならシグマ 14mm f1.8 DG HSMの方が有利でしょう。
背景ボケは望遠レンズだけの世界ではありません。
超広角レンズでも、撮影距離とf値によっては大きなボケが生まれるのです。
実際に撮影したものを比較(星空)
あまり時間も無かったので本格的な撮影は出来ませんでした。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMを天体用レンズとして購入する人もいるようです。
どちらも開放で撮影しました。
取って出しで無加工。
当たり前のことですが1.5絞り分明るいので、シグマ 14mm f1.8 DG HSMの方が星は沢山写ります。
ただ、住宅街ですので光害が多く、これ以上の露出となると夜空が白けてしまいます。
いずれ、星空スポットで比較撮影してみましょう。
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDは天体写真用として愛用しているユーザーも多いです。
中には他社のボディにマウントアダプターを取り付けて、無理矢理装着している人もいるぐらいです。
昼間の撮影では14mm f1.8 DG HSMの仕上がりを実感しました。
天体写真も期待できそうです。
ネックは重量
シグマ 14mm f1.8 DG HSMは重量が1,230gもあります。
AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDが、970gですので、持ち比べると圧倒的に重く感じてしまいます。
重いという事は三脚への負担も大きくなります。
特に星空撮影の場合、一眼カメラ用三脚では苦しいかもしれません。
中判用三脚の方が安全です。
バランスを崩して倒してしまっては元も子もありません。
画質は良いのですが、機動性に欠けます。
より良い画質で時間をかけて撮影したいならシグマ 14mm f1.8 DG HSM。
携帯性と画質を両立させたいなら、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDといった使い分けが良いかと思います。
シグマ 14mm f1.8 DG HSMは、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDでは撮影できない世界を見せてくれる1本です。
通常の撮影で物足りない人には、手に入れておきたい1本かもしれませんね。
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