LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF
2024年4月19日、LAOWAブランドから超広角レンズ 10mm F2.8 ZERO-D FFが発売されました。
このレンズはAnhui ChangGeng Optical Technology (Venus Optics)社が製造し、日本国内では株式会社サイトロンジャパンが販売しています。
フルサイズフォーマットで焦点距離10mmを実現し、開放f値2.8と明るいのが特徴です。
最新の設計ということで写りや操作性など期待するところはあるでしょう。
今回は8年前にコシナより発売された、同じく焦点距離10mmが使える、フォクトレンダー HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalと比較して性能の違いを比較してみます。
写りや操作性など、随分違いますので購入を検討されている方の参考になればと思います。
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF -vs- HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical
まずは、双方の製品仕様を確認します。
【製品仕様一覧】
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF | フォクトレンダー HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical | |
---|---|---|
レンズタイプ | 単焦点 | 単焦点 |
焦点距離 | 10mm | 10mm |
開放f値 | 2.8 | 5.6 |
レンズ構成 | 9群15枚 | 10群13枚 |
絞り羽根枚数 | 5 枚 | 10 枚 |
最短撮影距離 | 12cm | 30cm |
レンズ内手振れ補正 | なし | なし |
防塵 | なし | なし |
防滴 | なし | なし |
フィルター径 | 77mm | 取付枠なし |
最大径x長さ | 82 x 70.8mm | 67.4×68.5 mm |
重量 | 約420g | 375g |
焦点距離は同じなのですがフォーカス方法や開放f値、絞り羽根数など多くの部分で違いがあります。
これも踏まえつつ、実際に触ってみて良い点、気になった点などを順に見ていきましょう。
【注意】
検証にはNikonZ6を使用しています。
HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 AsphericalはEマウント用を変換アダプター(ETZ21Pro)を用いて動かしていますのでその点ご留意ください。
AFが快適なLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF
まずはフォーカス方法の違いから。
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFはAFを使って快適にピント合わせが出来ます。
※Nikon Z、SONY Eのみ
これに対して、HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 AsphericalはMF。
超広角レンズは一般的に被写界深度が深いため、正確にピントを合わせなくてもある程度写ってしまいます。
逆に正確にピントを合わせようとしても成否が難しく、液晶画面で拡大して確認しなければならないこともあります。
多くの場面でファインダー覗きながらピントを正確に合わせるのは困難かもしれません。
こういった点からもAFモーターを搭載したLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFは、ピント合わせに手間取ることがありません。
AFはSTMステッピングモーターを内蔵しており静かで速い!
撮影が快適であることは間違いないでしょう。
撮影範囲が広いHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical
今回比較に使用したのは、EマウントのHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical。
使用したボディはNikonZ6ですのでETZ21Proを使ってマウント変換をしています。
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFとHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalは焦点距離が同じなのですが、写る範囲が若干違います。
製品本来の仕様なのか、変換アダプターの影響なのかは分かりませんがHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalの方が若干広く写ります。
その差は、同じ位置にカメラを固定して比較すると分かる程度。
微妙な違いですが、少しでも広い範囲を写すならHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical+変換アダプターという組み合わせが選択肢として考えられます。
明るい分 画質はLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFが有利
双方で大きく違うのが開放f値。
【開放f値の比較】
製品名 | 開放f値 |
---|---|
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF | f/2.8 |
HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical | f/5.6 |
この違いによって絞り込める余裕が変わり、最終的に画質にも影響してきます。
開放f値が2.8と明るいLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFと、f5.6のHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical。
f値を変更しつつ、それぞれの画質を比較してみましょう。
使用カメラ:NikonZ6
中央部分と周辺部(右上)を撮影、原寸表示
【画質比較・中央部分】
中央部分は、どちらの製品も開放からよく解像しています。
また、同じf値で比較してもそれほど差は感じられません。
【画質比較・周辺部(右上部)】
周辺部分についてはどちらの製品も開放に近くなると画質が劣化します。
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFは開放のf2.8で画質がかなり劣化しており、f5.6あたりで安定します。
HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalについても開放での画質が甘く、その傾向はf8あたりまで続きます。
シャープに写すならf16ぐらいまで絞る必要がありそう。
開放f値が明るい分LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFの方が画質の面では有利であると考えます。
ゴーストはどちらも出るが…
カメラ用交換レンズとゴーストは切り離せない関係にあるといえます。
特に光源の影響を受けやすい超広角レンズではその耐性は気になるところ。
それぞれ、ゴーストの出具合について見てみましょう。
どちらもゴーストは出現しますが、写り方は明らかに違います。
もちろん、方向によって出方の違いや好き嫌いもありますので、どちらが優れているという判断は難しいです。
ただ、LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFは開放方向でフレアが目立ちましたので、そういった面を加味するとHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalの方が逆光耐性は強いといえるかもしれません。
近づいて撮ることができるのは…
双方のレンズは最短撮影距離が違います。
【最短撮影距離の比較】
製品名 | 最短撮影距離 |
---|---|
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF | 12cm |
HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical | 30cm |
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFは最短撮影距離が短いため、被写体に寄って撮影することが可能となります。
花や小動物、模型など、遠近感を強調して撮影することが出来ます。
これは、HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalに無い強みといえるでしょう。
フロントフィルター対応で安心感のあるLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF
超広角レンズの多くは前玉が突出しています。
その形状から出目金レンズとも呼ばれ、基本的にねじ込み式フロントフィルターは取付できません。
ですから、撮影中のレンズの保護が難しく、傷や汚れのリスクが常に付きまといます。
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFはねじ込み式フロントフィルターに対応しているため、レンズ保護の面から大きな安心感があります。
埃や砂、雨などに神経質にならずに撮影できる点はHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalより優れているといえます。
もし、何かあっても「フィルター交換のみで済む」という安心感。
フィルターを選ぶ際は薄枠タイプを選びましょう。
枠の厚いタイプはフィルター枠の影が写り込みますので注意。
とにかくコンパクトなHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical
HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalは画角のわりにコンパクトです。
それはLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFの大きさが目立ってしまうほどといえます。
【大きさの比較】
製品名 | 仕様上の大きさ |
---|---|
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF | 82 x 70.8mm |
HELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Aspherical | 67.4×68.5 mm |
双方を横に並べるとこのとおり。
仕様書の上では直径14.6mm、全長2.3mmしか違いませんが、フードまで入れると直径で約16mm、全長は約18mmの差となります。
実際に触ってみると、LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFは数値以上に太く長く感じるでしょう。
持ち運びや収納、撮影時の取り回しを考えると、コンパクトなHELIAR-HYPER WIDE 10mm F5.6 Asphericalの良さが引き立ちます。
”滑る筐体”が気になって仕方がないLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF
LAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FF最大の欠点と考えるのが滑りやすい筐体。
これは撮影していてとても気になりました。
ピントリングにもラバーが無く、滑り止めの溝が刻まれているのですが、滑り止めとしての効果は薄いです。
ピントを操作する程度なら問題ないのですが、カメラ持ち運びの際にレンズだけを持つと手を滑らせて落下させる危険性もあります。
この問題はレンズ脱着時にも気になりました。
表面処理も丁度滑りやすくなるぐらいの加工……。
手を滑らせて落下させる危険性が高いレンズであると感じます。
持ち上げるときはレンズのみではなくボディも一緒に。
気になる部分はいくつかあるけどLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFを薦めるわけ
どちらを選ぶかは人それぞれだと思いますが、AF搭載(NikonZ、SonyE)で明るく、寄って撮影できるLAOWA 10mm F2.8 ZERO-D FFはお勧めできる超広角レンズです。
大きくて、逆光耐性が若干弱く、滑りやすいという欠点はありますが、それを踏まえても選ぶ価値はあります。
現在、欠品状態ですがいずれ落ち着きますのでその時は是非手にしてみてください。
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