サードパーティレンズメーカーとして知られるSIGMA。
SIGMAはかなり尖った製品を出す印象があります。
ちょっとした「隙間」を埋めるようなレンズですね。
その一つとして注目するのが20mm F1.4 DG DN。
焦点距離20mmの大口径単レンズなのですが、いたるところに星景撮影を意識した造りとなっています。
その実力について紹介しましょう。
SIGMA 20mm F1.4 DG DN
SIGMAが発売する20mm F1.4 DG DNは20mm F1.4 DG HSMの後継製品として位置づけられています。
旧製品である20mm F1.4 DG HSMは2015年にニコン、キャノン、シグマ用が、2018年にはソニーEマウント、ライカLマウント用が発売されています。
これに対し新型の20mm F1.4 DG DNは2022年にソニーEマウント、ライカLマウントが発売されています。
ソニーEマウントとライカLマウントだけを見るとわずか4年。
かなり短いスパンでの新製品が発売されたと感じます。
どこが変わったのか?
まずは両製品の仕様を比較してみましょう。
【仕様比較・ソニーEマウントの場合】
20mm F1.4 DG HSM | 20mm F1.4 DG DN | |
---|---|---|
フォーマット | フルサイズ | フルサイズ |
焦点距離 | 20mm | 20mm |
開放f値 | F1.4 | F1.4 |
レンズ構成 | 11群15枚 | 15群17枚 |
絞り羽根枚数 | 9 枚 | 11 枚 |
最短撮影距離 | 27.6cm | 23cm |
防塵 | 〇 | 〇 |
防滴 | 〇 | 〇 |
フィルター径 | - | 82 mm |
寸法 | 90.7×155.8mm | 87.8×113.2 mm |
重量 | 1,015 g | 630 g |
発売日 | 2018年6月22日 | 2022年8月26日 |
大きな変更点としては、
・最短撮影距離が短くなった。
・前面フィルターが取り付けられるようになった。
・軽くコンパクトになった。
といったものが挙げられるかと思います。
これらを含め20mm F1.4 DG DNの良い点、イマイチな点ついて見ていきましょう。
SIGMA 20mm F1.4 DG DNの良い点、イマイチな点
20mm F1.4 DG DNは多くの点で旧製品から改良されています。
また、公式発表されている通り「星景撮影レンズ」としても高い能力を発揮すると感じます。
星景撮影レンズという視点も含め、注目したポイントについて見ていきましょう。
軽くコンパクトになった
20mm F1.4 DG DNは軽くコンパクトになりました。
特に重量は400g近く軽量化されており、ボディとのバランスが大きく変わりました。
旧製品の20mm F1.4 DG HSMはレンズのみで1kgを超えておりましたので、撮影時は前のめり、ストラップで首から下げようものなら、重量感を僧帽筋で感じることになるでしょう。
とにかく重くて大きいというのが、持ち出しの脚を重くしていたレンズといえます。
それに比べ新製品は630g。
これは標準的なズームレンズと変わりません。
参考までに
AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRが710g
AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VRが680g
ですのでそれより若干軽いです。
これで持ち出し時に躊躇することは減るでしょう。
ねじ込み式レンズフィルターが付くようになった
旧製品の20mm F1.4 DG HSMは、ねじ込み式レンズフィルターの取付が出来ませんでした。
これがかなり難点で、
・撮影時にレンズ前玉を触らないように気を使う
・チリや埃が付くと直ぐに除去する必要がある
・雨天時の撮影は気を使い過ぎて出来ない
・かぶせ式レンズキャップが邪魔
といったことがあります。
20mm F1.4 DG DNではねじ込み式レンズフィルターが取り付けられるようになりました。
フィルター径は82mmと大きめですが、レンズの保護が出来ますし、特殊フィルターの取付も楽です。
星景撮影時に重宝するKenko・プロソフトンシリーズの装着も可能となるので、この点は大きく改善されたといえるでしょう。
リアフィルターに対応
20mm F1.4 DG DNはリアフィルターに対応できるようになりました。
リアフィルターはレンズの後玉側にフィルター溝があり、そこに専用設計されたフィルターを差し込むことでフィルター効果を得るというものです。
一般的には出目金レンズ等、前面にフィルターが付かないレンズに用いられる手法なのですが、このレンズはねじ込みフィルターに対応しつつ、後方にもフィルターが付くというちょっと変わった仕様なのです。
これも星景写真を撮る人には有難い機能です。
「前玉側にねじ込み式レンズフィルターを取付ければ良いのでは?」
という疑問があるかと思いますが、星の強調に使われるソフトフィルター等、レンズの後に付けた方が良い場合があるのです。
絞りリングは使いやすい
クラシカルなフィルムカメラはレンズ側に絞りのリングがあり、それをガチャガチャ回すことによって絞り値を変更したものです。
その後カメラの電子化が進み、絞りはダイヤルで操作するのが主流となりました。
しかし、最近また絞りリングが復活しつつあります。
絞り機構自体は電磁式なのですが、絞り操作リングをレンズの筐体に取り付け、グルグル回すことで電子的に絞り値を変更しようというものです。
これがとても使いやすい。
露出モードを絞り優先やマニュアルに設定し、直感的に絞り値を決められます。
「使いにくい!」という人には、絞りリングをAポジションにしておけばボディ側で操作可能。
絞りリングのクリック設定や絞りリングのロック機能など、操作を補助する機能も付いているので絞りリングの操作性能は良いと感じます。
MFL(マニュアルフォーカスロック)の親切仕様
20mm F1.4 DG DNにはMFL(マニュアルフォーカスロック)スイッチが付いています。
その名のとおりマニュアルフォーカスをロックする機能で、このスイッチをロック側にするとフォーカスリング操作が無効になります。
MFLをロックすることにより、マニュアルフォーカス時にピントを固定できるのです。
使用用途としては星景写真。
星は非常に遠い被写体ですので、ピント合わせは基本的にマニュアルフォーカスとなります。
また、星の撮影は長時間にわたることが多いため、いつの間にかピントが動いてしまうという事故も起きないとは限りません。
こういった事故を防ぐためにフォーカスロック機能はありがたいと思います。
サジタルコマフレアを抑えてしかり写る
サジタルコマフレアとは、画面周辺部にある点光源がトンビやカモメのような形状に写る収差の事です。
小さな光の点を沢山写す星景写真にとってサジタルコマフレアは悩ましい問題のひとつです。
これは製品の特性ですので、技術でカバーできるものではありません。
星景に適したレンズはこういったサジタルコマフレアを抑えた写りとなっています。
20mm F1.4 DG DNに関してもメーカーが星景を意識しているだけあって、サジカルコマフレアが大幅に抑えられています。
画面周辺部まで星の点光源は丸く写るため大きく引き伸ばしても気になることは少ないでしょう。
外観には出てきませんが旧製品と比較すると大きく進化したポイントであるといえます。
やっぱりマウントバリエーションは増やして欲しい
高性能な20mm F1.4 DG DNですが、今のところ製品化されているのはソニーEマウントと、ライカLマウントのみ。
今のところ他社からも20mmF1.4レンズは発売されていませんので、この仕様ではSIGMAのひとり舞台。
とはいえ対応マウントが少ないのは物足りないです。
マウントアダプターを使えば取付が出来ないことがありませんが、機能が制限される恐れが高いためお勧めできません。
ということでニコンZマウント、キャノンRFマウントあたりの製品化を期待したいところです。
玉ボケ撮影も楽しめる高性能レンズ
20mm F1.4 DG DNは星景写真だけではありません。
普段使いでも十分な性能を発揮してくれます。
20mmという短い焦点と、F1.4という大口径を生かした玉ボケ写真は是非とも試していただきたいです。
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