高倍率ズームレンズ
高倍率ズームレンズとは、広角から望遠までを1本でカバーするズームレンズのことです。
1本で多くの焦点距離をカバーすることが出来る為、撮影機材をコンパクトにまとめたい場合に適しています。
ズームの倍率は5倍~20倍程度と幅があり、製品の選択肢もあります。
カメラメーカーだけでなくレンズメーカーも製品化しており、同等仕様でもメーカーによって差別化することができます。
高倍率ズームレンズの利点
高倍率ズーム最大の利点は幅広い焦点距離をカバーできることです。
1本で広角から望遠まで使えるものが多いため、旅行など機材をコンパクトにまとめたい時などに適しています。
例えば、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRなら1本で24mm~200mmまで対応していますので、一般的なズームレンズ2本分に相当します。
画質や明るさの面で不利になる事もありますが、コンパクトであるということは充分メリットになると思います。
高倍率ズームレンズの選び方
そんな高倍率ズームレンズですが、どれを選んでも良いというわけではありません。
「大は小を兼ねる」は高倍率ズームレンズの世界ではデメリットとなり得るのです。
高倍率ズームレンズは「必要最小限にまとめる」というのが一つのポイントとなります。
ということで、実際に製品を選ぶポイントについて解説します。
焦点距離
高倍率ズームレンズの焦点距離は、広角領域から望遠領域までカバーしているものが多いです。
ここで気を付けて欲しいのは、焦点距離は35mm換算で計算する必要があるということです。
デジタル一眼カメラにはフルサイズ、APS-C、マイクロフォーサーズなどイメージセンサーサイズに違いがあり、それぞれ焦点距離の画角が変わってきます。
例えば以下のような製品。
焦点距離は18mm~250mmとなっており、フルサイズで計算すると数字通りの焦点距離です。
ただ、この製品はDC(APS-C用)ですので、撮影時の焦点距離は27mm~375mm(35mm換算)となります。
また、同製品のCanonマウントですと1.6倍ですので28.8mm~400mmとなります。
ちょっとややこしいのですが、焦点距離の計算は重要ですので覚えてください。
レンズの焦点距離は必ず35mm換算して見比べましょう。
開放絞り値
高倍率ズームレンズは焦点距離によって開放絞り値が変わる製品が多いです。
例えば、NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VRなら開放絞りは24mmの時点でf4、200mmの時点でf6.3といった具合に変化していきます。
このように、ズームレンズは望遠領域になると開放絞り値が大きく(暗く)なるため、露出に影響が出やすくなります。
ですから、ズームレンズで望遠側の開放絞り値は重要です。
例えば、テレ側(望遠側)が500mm(35mm換算)で開放絞り値がf6.3のレンズですと、昼間でもISO感度を上げないと厳しい事があります。
例えば以下のような製品。
テレ側の焦点距離が400mmですがAPS-C用の為、35mm換算すると600mm相当です。
ですから、シャッター速度は1/600秒以下としてください。
この時、開放絞り値はf6.3で露出不足になる事が多いため、ISOを上げることになります。
こういったレンズの望遠領域はISO感度を上げることを前提に使うと覚えておいてください。
テレ側の開放絞り値(暗い側のf値)を確認しましょう。
手ブレ補正
手ブレ補正はあった方が良いのですが、絶対ではありません。
手ブレ補正機構が搭載されていれば、その分重量が増しますので取り回しに影響します。
こういった高倍率ズームレンズの場合、焦点距離によって手ブレ補正の効果は微妙だったりします。
最近のカメラボディは高感度性能に優れているものが多くなっていますので、露出不足は高感度(ISO感度を上げる)でカバーすることも視野に入れて良いと考えます。
同等価格で重量もそれほど変わらないなら、手ブレ補正機構が付いている商品を選ぶという程度で良いかもしれません。
手ブレ補正はあまり重要視しなくても良いです。
AFピント駆動方式
オートフォーカス(AF)のピント駆動方式には大きく分けて2つあります。
ひとつはボディ内モーター駆動方式で、ボディ内のモーターでレンズのピントを動かします。
もうひとつはレンズ内モーター駆動方式で、レンズ内のモーターでピントを動かします。
一般的にピント駆動が速いのはレンズ内モーター駆動方式で、走ってくる車両など動いている被写体を追従する際に大きな差が出ます。
また、レンズ内モーター駆動方式の中にもHSMやSTMなど種類があり、筐体の重量や製品によってもピント駆動速度は違います。
こればかりは体験してみないと分からないので、購入する際は実際に触ることをお薦めします。
AFの動作は購入前に実物で確認することをお薦めします。
ズームリングの回転方向
現在市販されている製品の多くは、回転式のズームリングを採用しています。
ズームリングを回転させると、焦点距離が変わっていくのですが、メーカーによって違います。
主なメーカー別ズームリングの回転方向は以下のようになっています。
メーカー | 回転方向 |
---|---|
Nikon | 時計回り |
Sony | 時計回り |
Pentax | 時計回り |
Panasonic | 時計回り |
Fuji | 時計回り |
Tamron | 時計回り |
Tokina | 時計回り |
Canon | 反時計回り |
SIGMA | 反時計回り |
普段、時計回りレンズを使用していて、反時計回りレンズに取り換えると、操作に戸惑うことが多くなります。
例えばNikonレンズを使用していて、SIGMAレンズに交換した際などがこれに該当します。
回転方向は感覚的に操作するので、できれば統一した方が操作にモタつくことが少ないです。
なお、MF(マニュアルフォーカス)でピント操作する場合もズームリングと同じ方向に操作しますので、MF操作の際も同様の注意が必要となります。
ズームリングの回転方向は同じ方が使いやすいです。
長さ、重さ
高倍率ズーム最大のメリットは携帯性です。
ですから、長すぎたり重すぎたりする製品は、あまりお勧めできません。
レンズ本体重量が1kgを超えるレンズを使うぐらいなら、標準ズームと望遠ズームの2本持ちをした方が画質の面で有利です。
製品によって違いはありますが、画質はどう頑張っても一般的なズームレンズ以下となってしまうのです。
大きく、重くしてしまう利点は一切ありません。
高倍率ズームレンズに、大きい、重いはNGです。
画質より携帯性を優先する人向けのレンズ
幅広い焦点距離をカバーする高倍率ズームレンズですが、画質の面では通常のズームレンズより劣りがちです。
最大のメリットは携帯性です。
画質を望んではいけません。
一部、高級なレンズを使った高倍率ズームレンズも存在しますが、重くて大きいので携帯性はズームレンズ2本とあまり大差がありません。
「高倍率ズームレンズは画質より携帯性」
こう覚えておきましょう。
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