レンズの最短撮影距離
カメラ用交換レンズの最短撮影距離とは、文字通り最短の撮影距離です。
「被写体にどれだけ近寄って撮影できるか」ということですね。
花や昆虫、模型など、小さな被写体を撮影する場合は、最短撮影距離が短い方が有利です。
ただ、一般的なカメラ用交換レンズは、遠方での描写性能を優先している為、最短撮影距離が短いものは少ないです。
このあたりが落とし穴。
デジタル一眼カメラで被写体に近づいて撮影しようとしても、ピントが合わないのは最短撮影距離未満となってるためです。
このまま撮影するとピンボケになりますし、カメラの設定によってはシャッターすら切れません。
被写体に近づいて「なぜかわからないけどシャッターが切れない!」と感じたら、最短撮影距離未満を疑ってください。
被写体に近づいた時にシャッターが切れないのは最短撮影距離未満となっていることが多いです。
最短撮影距離と画角
小さな被写体に近寄って撮影する際に、重要となるのが「最短撮影距離」です。
それと同じぐらい重要なのが「画角」です。
画角はカメラで写真を写した際に実際に写る範囲(角度)です。
イラストの赤矢印が最短撮影距離、青の角度が画角です。
同じ画角でも近くで撮影すれば被写体は大きく写りますし、同じ撮影距離でも画角が小さければ被写体は大きく写ります。
また、レンズの画角は焦点距離によって変わります。
焦点距離が小さければ画角は大きくなりますし、焦点距離が大きければ画角は小さくなります。
プラモデル撮影に向かないレンズとは?
ここまでの話を総合すると「最短撮影距離」と「画角」のバランスが重要になってくると分かります。
一般的に最短撮影距離が短いレンズは少ないです。
ですから、被写体からはある程度距離を取る必要が出てきます。
被写体から離れるということは画角が大きい(焦点距離が短い)レンズを使うと、撮りたいものが小さく写ってしまいます。
では、プラモデルの撮影する場合を考えてみましょう。
同様に近寄って撮影することを考えると、画角が大きい(焦点距離が短い)レンズを使うと、限界まで近寄っても小さく写ってしまいます。
プラモデル撮影に向かないレンズ。
それは一般的に「広角」や「超広角」と呼ばれる焦点距離の短い(画角の大きな)レンズです。
広角レンズや超広角レンズはプラモデルなど小さなものを撮影するのに向いていません。
広角レンズは不向きだけど・・・
広角レンズは画角が大きいため、プラモデルなどを構図いっぱいに撮影するのは不向きです。
かといって、標準~望遠領域の写真ばかりではつまらないでしょう。
出来れば広角レンズ特有の遠近感を生かした写真を撮影してみたい。
何とかならないものでしょうか?
実はカメラ用交換レンズは製品ごとに仕様が違うため、同じ焦点距離でも最短撮影距離が違います。
ということで、手元にあるいくつかの広角レンズを使って、どれくらい近寄ることができるか試してみることにします。
被写体はアオシマの1/32トラック。
全長は約40cmです。
カメラ用交換レンズは製品によって仕様が違うので最短撮影距離が短いものも存在します。
Nikon AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
Fマウントで使いやすい大口径ズームレンズです。
このレンズの最短撮影距離は焦点距離によって以下のように変わります。
41cm(焦点距離24mm)
39cm(焦点距離28mm)
38cm(焦点距離35mm-50mm)
40cm(焦点距離70mm)
今回は「広角レンズを試したい」ということで、焦点距離24mmで撮影します。
はい、こんな感じ。
焦点距離24mm、最短撮影距離41cmなので随分小さく写りましたね。
ズームレンズなので焦点距離を標準や望遠側にすれば構図にしっかり入りますが、広角レンズ特有の遠近感が無くなります。
参考までに焦点距離70mmですとこんな感じ。
中望遠ですので最短撮影距離まで寄れば、構図からはみ出します。
SIGMA 24mm F1.4 DG HSM
今回、最も期待したSIGMA 24mm F1.4 DG HSM。
24mmの広角で最短撮影距離は25cmです。
AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDより最短撮影距離が16cm短いのですが、この差が大きいです。
実際に撮ってみたものがコレ。
16cm近づいただけで随分違います。
広角レンズ特有の遠近感も出ていますし、プラモデルが構図いっぱいになるまで寄ることが出来ています。
期待通りの写りといえるでしょう。
SIGMA 28mm F1.8 EX DG ASPHERICAL MACRO
このレンズは、広角レンズにプチマクロ(1:2.9)が付いた変わり種です。
最短撮影距離は20cmで先ほどの24mm F1.4 DG HSMよりも更に寄ることが出来ます。
はい、完全にはみ出しちゃいましたね。
もう少し離せば、全体がフレームインします。
焦点距離が28mmなので遠近感も出ていますし、24mm F1.4 DG HSMよりも近寄れるので、2tやミニデコの撮影にも使えそうです。
プラモデル撮影用の広角レンズといえそうですね。
Nikon AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED
超広角ズームレンズとして人気のあるAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED。
15年以上昔の設計ですが、完成度は高いと感じます。
このレンズの最短撮影距離は以下のとおり。
28cm(焦点距離18mm~24mm)
30cm(焦点距離18mm未満)
せっかくなので超広角を試してみましょう。
最短撮影距離(30cm)で撮影していますが、さすが焦点距離14mm。
遠いです。
遠近感はさすがという感じですが、プラモデルを撮影するのは少々苦しいですね。
撮るならトリミング前提です。
Nikon Ai AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D
こちらも変わり種レンズ。
最近はあまり見なくなった魚眼レンズです。
特徴は、あえて歪ませて画角を大きくしているところ。
よく、超広角と混同しがちですが、歪みを生かすか抑制するかの違いがあります。
このレンズの最点撮影距離は25cm。
ほぼ結果は分かり切っているのですが、こんな感じに写ります。
もはや、何を撮りたいのか分からないですね。
プラモデルを上手く写せる広角レンズは貴重
今回は5つの製品を試しましたが、上手く寄れる広角レンズは少ないということが分かります。
他にもいくつかの製品がありますが、同程度の性能です。
頭一つ抜けているのが28mm F1.8 EX DG ASPHERICAL MACROで、広角領域で近寄れる貴重な1本です。
同シリーズで20mm、24mmがあるので気になる方は探してみても良いのではないでしょうか。
現在は生産終了ですが、中古市場でかなり安くなっています。
個人的に超オススメ。
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