ガラスの写り込み
写真を撮っていると、ガラスの向こうにある被写体を撮影することがあるかと思います。
ショーウインドウやショーケースなどが代表的な例ですね。
で、ガラス越しに撮影をすると、たいていガラスに反射した余計なものが写り込みます。
しかし、この写り込みはある道具を使うと除去でる場合があります。
ある道具とは、偏光フィルターです。
偏光フィルターを使い、一定の角度で撮影するとガラスへの写り込みは除去できます。
その効果と手法について試してみました。
PLフィルター
写り込みの除去に使用するのはPLフィルターというものです。
PLフィルターは、Polarized Light(偏光)フィルターの略で、偏光膜を利用したレンズ用フィルターです。
ガラスの写り込み(反射)除去には、なにはなくともこのフィルターが必要です。

ガラス以外にも、水面の反射除去にも使えます。
あと、コントラストを強調する効果もあるので、風景写真に使う方も多いです。
1枚あると色々な場面で役立つと思いますので、まだ持っていない方は入手することをお薦めします。
PLフィルターでの撮影方法
PLフィルターは通常の保護フィルターなどと違い、使い方に注意点があります。
主な注意点は以下の2つ。
注意点1回転
注意点2角度
それぞれ説明しましょう。
【回転】
PLフィルターはフィルター枠(前枠)が回転するように出来ており、回転させることによって効果が変わります。
ですから、撮影時に構図を決めたらフィルター枠をゆっくり回転させ、目視で効果を確認してください。
あまり回転させると、ネジ山が外れて落下する場合があるので注意しましょう。
効果が分かりにくい場合は、一度レンズから外してみて、目視で確認するのも一つの方法です。

【角度】
PLフィルターは被写体との角度によって効果が変わります。
ガラス面に対して30~40°の斜めから撮影すると、最も反射除去の効果が得られます。

真正面からの撮影に対しては効果がありません。
また、曲面のガラスに対しては、角度の都合上、反射除去効果が限られてしまいます。
実際に撮影してみる
実際にガラスの反射除去効果について検証してみました。
似たような構図でPLフィルターありとなしを比較しています。
まずはPLフィルターなし。

ガラスに建物が写り込んでいます。
このため、ガラスの向こう側がよく見えません。
そしてPLフィルターありで撮影したもの。

うっすらと建物や道路が写っていますが、写り込みは随分減っており、PLフィルターなしの写真とは大きく違います。
この2枚を見比べるだけでも、PLフィルターの効果を分かっていただけたかと思います。
PLフィルターの欠点
高性能なPLフィルターですが、大きな欠点が2つあります。
ひとつが高価であるということ。
そして、もうひとつが寿命があるという事です。
保護フィルターなど、一般的なフィルター(55mmの場合)は1,500円前後です。
これに対し、PLフィルターは、その5倍近くします。
フィルターの中では高価な部類になるので、簡単に手が出ません。
特に、手持ちレンズのフィルター径が違う場合はフィルター径毎にそろえる事になり、大きな支出となるかもしれません。
また、PLフィルターの寿命についても考慮する必要があります。
多くのフィルターは、メンテナンスさえしっかりしておけば半永久的に使えます。
しかし、PLフィルターは偏光膜が経年変化を起こす性質があるため、寿命は7~8年といわれています。
寿命が来ると、黄色っぽく変色し撮影した際に色が濁ってしまします。
高価なうえに寿命があるという、金食い虫な性質を持っているのがPLフィルターなのです。
PLフィルターの選び方
PLフィルターは反射除去だけでなく、通常の撮影においても空をより青く表現したり、色彩コントラスト効果を上げたりできます。
色彩表現力を上げるためには不可欠で、中にはレンズに着けっ放しという人もいます。
そんなPLフィルターですが、「PLと名が付くなら何を選んでもいい」というわけではありません。
最期に、PLフィルターを購入する際に確認する点を挙げます。
枠厚さ
PLフィルターは前枠と後枠で構成されているため製品によっては、枠の厚みが変わってきます。
通常枠は前枠と後枠が同じぐらいの厚みであるため、全体として枠が厚くなります。
この時、注意したいのが広角レンズ(35mm程度以下)を使用すると、枠の影が写真に写り込むという事です。
この写り込みを防止するため、薄枠タイプというものも製品化されています。
枠の写り込みが予想されるなら、薄枠タイプを候補に入れると良いでしょう。
サーキュラータイプ
通常のPLフィルターは、ハーフミラーやローパスフィルター等の機構に干渉すると、AFや測光機能に支障が出る場合があります。
これを防止するためにサーキュラータイプのPLフィルターが製品化されています。
現在、発売されているデジタル一眼カメラやスマートフォンのカメラは、全てこちらになるため注意が必要です。
通常のPLフィルターはオールドカメラ用と思ってください。
サーキュラーPL、C-PLなど製品によって呼び方も違います。
各種コーティング
レンズフィルターは外気に晒されるため、埃や汚れが付着しやすいです。
また、レンズの性能に極力影響しないように様々なコーティングが施されています。
メーカーや製品によって効果は様々ですので、コーティングの仕様をよく理解し、自身の撮影スタイルに合ったものを選んでください。
一番高い物が自身に合っているとは限りません。
中華フィルターはバクチ
中華(中国製)フィルターも随分性能が上がっていますが、まだまだ賭け(バクチ)の要素が強いです。
安いからといって、安易に購入するのはお勧めできません。
仕様書どおりの性能を満たさなかったり、ムラがあったり、フィルター枠のネジ山が合わないなど、買ってから後悔する事も少なくありません。
ですから、たとえ中国で製造していたとしても、国産メーカーの方が安心感はあります。
国産メーカーとはケンコー(ケンコートキナ)、マルミ、ハクバ、ソニー、キャノン、ニコン、フジ、パナソニック、シグマ等ですね。
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