フルサイズ一眼カメラ
フルサイズ一眼カメラとは、35mm判フィルムの一コマ(36mm×24mm)と同等サイズのイメージセンサーを搭載したカメラのことです。
通称、フルサイズ機とも呼びます。
フィルム一眼レフカメラから移行する際は、同等のイメージセンサーを搭載したフルサイズ機ですとレンズ資産を生かしやすいです。
では、なぜフルサイズ機以外の製品があるのか?
デジタル一眼レフカメラが登場した当初は、APS-Cサイズ(23.6mm×15.8mm程度)のイメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラ(APS-C機)が主流でした。
これはフルサイズのイメージセンサーが高価であったためで、現在においても概ねその傾向は変わりません。
ですから、入門機や初心者向けのデジタル一眼カメラはAPS-C機が多いです。

現在APS-C機を使っているけど、フルサイズ機への買い替えを検討している人。
自身の撮影スタイルに合っているかよく考えましょう。
「フルサイズ機だから綺麗に撮れる」というわけではありません。
それぞれの特徴を理解するのがとても重要なのです。
フルサイズ機とAPS-C機の特徴
まず、フルサイズ機とAPS-C機ではイメージセンサーサイズが違います。
これにより様々な部分に影響が出てきます。
どういったものがあるのか。
主なものを挙げましょう。
【フルサイズ機の特徴】
高価。
ボディが大きくなりがち。
メーカーや製品によってイメージセンサーサイズはほぼ一定。
35mm判(フルサイズ用)のレンズがそのまま使える。
APS-C用のレンズを使うと周囲が切り取られる。
諧調表現が豊か。
背景が綺麗にボケやすい。
暗所性能が良い。
【APS-C機の特徴】
どちらかというと安価。
ボディをコンパクトにしやすい。
メーカーや製品によってイメージセンサーサイズが微妙に違う。
35mm判のレンズを使うと望遠が側に焦点が振れる。
APS-C用のレンズを使うとちょうど良い。
諧調表現が若干劣る。
背景がボケにくい。
暗所性能が劣る。
これを踏まえたうえでフルサイズ機をお薦めするのはこんな人です。
価格差を許容できる人
正直なところ、フルサイズ機のコスパは良くありません。
差額分の性能があるかは微妙です。
例えばニコンのZ5(フルサイズ)とZ50(APS-C)。
防砂・防滴仕様や、内蔵ストロボの有無など単純比較はできませんが、現時点で小売価格に6万円ほどの差があります。
更に交換レンズもフルサイズ用は高価になります。
APS-C用は比較的廉価仕様のレンズが多いのに対し、フルサイズ用は性能重視で高価な製品が多いです。
全体の重量も上がるので現在使っている三脚も使えなくなるかもしれません。
同様のシステムを構築すると、10万円単位で変わってくることは当たり前と思ってください。
取り回しが気にならない人
フルサイズ機はイメージセンサーサイズの都合で、APS-C機より一回り大きくなります。
もちろん重量も変わってきます。
先ほどと同様にニコンのZ5(フルサイズ)とZ50(APS-C)を比べると、Z5が590g、Z50が395gです。
これに加え、幅で7.5mm、奥行きで9.5mm、高さで7mm違います。
重さで200g弱、大きさで10mm弱ですが、実際に持って歩くと大きく違う事に気付かされます。
もちろんレンズも大きく重くなり取り回しは悪くなります。

フルサイズ機は、こういったサイズの違いが苦にならない人向けのカメラといえます。
35mm判(フルサイズ)のレンズ資産を使いたい
フルサイズ機でAPS-C専用レンズを使うと性能が限定されます。
具体的には周囲を切り取るクロップ(トリミング)がボディ内で強制的に行われることが多いです。
これにより、2,400万画素程度のフルサイズ機で撮影しても、中央部分だけが切り取られて1,000万画素程度になります。
これを防ぐためには、フルサイズ用のレンズを使用するしかありません。
ということで、現在APS-C機専用レンズしか持ってい場合、レンズの買い替えが必要となってきます。
フルサイズ用レンズはわりと高価なものが多いです。
また、そういったレンズを使わないとフルサイズ機の性能を発揮できません。
フルサイズ機を使うのなら、レンズ資産も重要になるのです。

階調が豊かな写真を撮りたい
写真における階調(グラデーション)とは、明るい所から暗い所までの段階です。
諧調が豊かな写真は明るい所から暗い所まで滑らかに明るさ表現されますが、階調が乏しいと滑らかさの無い表現となります。
一般的にフルサイズ機は諧調表現が豊かとされていますので、そういったものを重要視する人向けのカメラといえます。
具体的には夜景、花火、夕日、星空、雪、逆光など陰影の強い写真といったものが挙げられます。
ナイトシーン撮影がメインなら、フルサイズ機は適しているといえます。

背景ボケを綺麗に表現したい
背景ボケとは、被写体にピントを合わせたときに背景がボケる様のことです。
フルサイズ機は背景ボケが綺麗に出やすいです。
また、背景ボケが出やすい大口径レンズや、接写用のマクロレンズもフルサイズ用の品揃えが多いです。
ですから、背景ボケを生かす環境が整っているといえます。
ポートレートや花を含め、背景ボケを綺麗に表現したい場合はフルサイズ機の方が良いと考えます。

暗所性能を求める
暗所性能とは暗い場所での撮影能力のことです。
具体的にはISO感度を上げて撮影した場合のデジタルノイズの少なさです。
一般的にフルサイズ機はAPS-C機に比べ暗所性能が良いとされています。
ただ、これはイメージセンサー以外の要素もありますので、必ずしもそうとは言い切れません。
15年前のフルサイズ機と最新のAPS-C機なら、最新のAPS-C機の方が暗所性能が良い可能性もあります。
あくまで、全体的な傾向として捉えておきましょう。
暗所性能が有利に働くのは高感度で撮影する場合です。
星空、夜景、室内、スポーツ、雲天、雨天等、明るさとシャッタースピードの関係により高感度撮影は必要となって来ます。
差が出る状況はわりと多いと理解しておきましょう。
フルサイズ一眼カメラを買わない方がいいのはこんな人
これらの内容を踏まえ、フルサイズ一眼カメラを買わない方がいい人はこんな人です。
・価格差が許容できない。
・撮影機材はコンパクトな方が良い。
・フルサイズのレンズ資産が無い。
・諧調表現の悪さは気にならない。
・ボケのある写真は撮らない。
・暗所性能を求めない。
今のAPS-C機にほとんど不満が無い人は、無理にフルサイズ機にする必要はありません。
買い替えたとして、劇的に写真が変わることは期待できません。
では、初めて買うならどちらが良いかというと、個人的にはフルサイズ機を勧めます。
これは被写体にもよりますが、APS-C機では直ぐに限界が来る可能性が高いからです。
カメラは写真を撮る道具ですので、伸びしろは重要だと考えます。
コメント