資産所得倍増プラン
資産所得倍増プランは岸田政権が打ち出している経済対策のひとつです。
合言葉は「貯蓄から投資へ」で、家計金融資産2,000兆円を貯蓄から投資に回すのが狙いです。
具体的な政策として今挙がっているのが、
少額投資非課税制度(NISA)
個人型確定拠出年金(iDeCo)
これらの拡充・改革です。
少額投資非課税制度(NISA)
少額投資非課税制度(NISA)は、株式や投資信託の、売却益と配当への税率を、一定の制限のもとで非課税とする制度です。
通常、株式や投資信託等の売却益や配当には20.315%の税金がかかります。
これを5年間限定で非課税とするものです。
ただし、NISAで運用できる投資資金は、年間120万円までと決まっており、文字通り少額投資家向けの制度といえます。
同様のもので、つみたてNISAというものもあります。
こちらもNISA同様、投資の利益に対する非課税制度ですが、非課税期間が20年となり、投資金額は年間40万円までです。
更に、購入できる投資商品が限定されるというのが特徴です。
また、NISAとつみたてNISAは同時に運用することは出来ません。
ですから、どちらかを選択することになります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、私的年金のひとつで、公的年金に上乗せする制度です。
積立金額を決め、自分で運用商品を選ぶことになるため、銀行預金に比べリスクは高めの制度といえます。
60歳まで引き出すことは出来ませんが、税金に関するメリットがあります。
具体的には、
積立金が所得から控除される
運用益は全て非課税
退職金や年金として控除対象になる
といったことがあります。
自営業の方や厚生年金が無い方の中には、既に利用されている方もいるのではないでしょうか。
従来より日本で運用されてきた国民年金制度だけでは、老後に生活資金が不足します。
銀行預金をしても良いのですが、預金のためのお金は課税後となり減ってしまいます。
ですから、こういった非課税制度は利用した方が良いと考えます。
NISAやiDeCoは若年層向け
NISAもiDeCoも、投資商品を運用することで、最大の節税メリットを得られる仕組みです。
投資は期間が長ければ長いほど効果が大きいです。
これは複利による影響で、かのアインシュタインも「複利は人類最大の発明」と評したといわれています。
それほど複利の力は大きいのです。
参考までに
毎月5,000円積立て
年利4%
複利運用
したとして、20歳から60歳までに約591万円貯まります。
投資積立金額が40年で240万円ですので、約2.5倍になる計算です。

これは、決して大げさな数字ではありません。
40年という長いスパンで見た場合、株式投資の世界で平均年利4%は、十分にあり得る数字なのです。
投資で重要なのは複利を生かすことです。
そのためには長い時間が必要です。
ですから、もし投資を始めるなら、なるべく若い方が有利といえます。
投資に対する節税制度と解釈すると、NISAもiDeCoも若年層向けの制度といえます。
貯蓄があるのは高齢層
では、家庭の貯蓄状況はどうなっているのか見てみましょう。

この表を見ると、貯蓄があるのは高齢層であるというのが分かります。
若年層といえば、ライフプランの変化が起きやすい30代で平均貯蓄額529万円。
投資を始めるのに適した20代に至っては、平均貯蓄額が165万円、中央値71万円となっております。
貯蓄額71万円は非常に危険な金額です。
人生のアクシデントひとつで、奈落の底まで転がり落ちる可能性が高いです。
例えば勤務先の倒産や解雇、事故、病気などですね。
逆に、投資に回すお金があるのが60代です。
子供も独立し、家のローンも終わり、退職金も入って投資に回すお金もあるでしょう。
しかし、60代以降に積極的な投資はお勧めしません。
2020年のデータですが、日本人の平均寿命はというと男性が81.64歳、女性が87.74歳です。
20~30年を今の預貯金と年金で賄う必要があります。
そう考えると、60代で平均貯蓄額1,635万円は、それほど余裕があるとは言えません。
医療費が増えていく年代でもありますので、現金をリスク資産に替えることは危険なのです。
今の内容では失敗に終わる
今の内容で「資産所得倍増プラン」を実施しても失敗します。
どの世代においても、積極的な投資が出来ないためです。
また、投資人口が少ないというのも問題です。
現在働いている人の多くは、金融に関する知識を親から教わっています。
定期預金の金利だけで3~4%もあった時代の人たちの教えです。
「銀行に預けておけば安心!」という世代に、満足な金融教育は出来ません。
そんな親を持つ子供もまた、定期預金神話を信じリスク資産を嫌悪します。
これは仕方がない事です。
ですから、今回の政策に対して批判的な人が多くなるのは自然なことです。
これらを踏まえると、金融資産倍増プランで得をするのは、「現在もNISAやiDeCoを利用している人」です。
2001年にiDeCoが始まり、2014年にNISAが始まってから、節税メリットを理解し着々と資産を築いてきた人たちです。
ですから、人数が少なくどう頑張っても全体の資産所得が倍になる事はありません。

世代間の資金移動が必須
このプランの最大の問題点は、
お金のある人に時間が無く
時間がある人にお金が無い
という日本の構造に適していないことです。
ですから、時間の無い高齢層から時間のある若年層へ、資金を移動させる必要があります。
具体的には、上限を設けて、子や孫に投資資金を提供した際に、贈与税を非課税とするというものです。
すぐに引き出せないように、iDeCoのような積立制度を改変すると良いかもしれません。

「わざわざ投資資金にしなくても?」という意見もあると思いますが、物価の上昇が今後も見込まれる以上、現金の価値は下がり続けます。
また、
日本企業に勤め
日本円で給料を貰い
日本円で貯金している
という事は、自分の人生を日本に一点賭けしているようなものです。
これはいけません。
円安が更に進み、日本円が今の半分の価値になったら、買えるものが半分になります。
個人でできる防御策は、日本一点賭けを止め、より広い世界に投資することなのです。
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