流し撮りとは
流し撮りとは躍動感やスピード感を表現する撮影方法のひとつです。
車などメインの被写体はブレないようにピントを合わせ、背景は流れるように撮影することによりスピード感を演出できます。
前回まで、シャッター速度、焦点距離、構図(角度)、距離について解説しました。




知識としてはこれぐらいあれば十分と考えます。
しかし、知識として知っているだけでは流し撮りは成立しません。
実際に撮影して、初めて流し撮り写真として仕上がるのです。
では、いきなり撮影会の日に流し撮りが出来るかというと、まず無理でしょう。
失敗作の山が出来上がるだけです。
必要なのは事前の練習。
その練習方法について解説します。
練習が必要な理由
多くの撮影方法がある中で、流し撮りは練習が必須の撮影法だと考えます。
なぜなら、他の撮影と違って体を動かす必要があるからです。
例えば、サッカーをするとしましょう。
この時サッカーのルールを勉強したり、トッププロの映像を見ても基本的には上手くはなりません。
実際にボールに触れてみて蹴って初めて技術が身につくのです。
自分がどれぐらいドリブルできるかとか、どれぐらいの強さでボールを蹴ればいいかというのは、体に覚えさせなければならないのです。
流し撮りも同様です。
動いている被写体を追いかけるには、どのタイミングで振ればいいかとか、どのようにカメラを構えればいいかというのは、体に覚えさせる必要があります。
どちらにも共通するのは、体に覚えさせるという事。
流し撮りは練習が必要な撮影法なのです。
練習場所は案外近くにある
流し撮りは撮影条件に制限が多い撮影方法であるという説明をしました。
具体的には、
道路から80m前後の位置
道路までの遮蔽物(植栽やガードレール)が無い
撮影に安全な場所
ある程度スピードの出る道路
ということを挙げています。
しかし、練習するだけならこの条件である必要はありません。
例えば、道路までの遮蔽物(植栽やガードレール)が無いという条件を外すだけで、これを満たす道路はずいぶんと多くなります。
幹線道路沿いの田畑や広い駐車場など、開けた場所が使えます。
また、道路から80m前後の位置という条件も外してしまうと、更に使える撮影ポイントは増えます。
焦点距離は100mm前後にしても良いですし、部分的に切り取っても良いのです。
練習ですから余分なものが写ろうが、端が切れていようが構いません。
流し撮りの練習で重要なのは綺麗に流すこと。
これに集中するようにしてください。
実際に近所の国道で撮影してみる
先ほど説明した「遮蔽物」と「距離」の2条件を外すと、近所の県道や国道でも十分練習が出来ることが分かります。
では実際、に練習したものを並べてみます。

まずは名阪国道で撮影したもの。
この道路は山間を通るうえに、周囲より高い位置にあるため撮影ポイントは少ないです。
しかし、スピードが出るため流し撮りはしやすい道路といえます。
今回の撮影ポイントは距離が不足するため、あえて後ろ半分は切っています。
ガードレールや標識も写っていますが、全く問題ないのです。
あくまで練習なのですから。

こちらは国道1号線で撮影したもの。
7:3構図なので後ろがブレちゃってますし、そのうえカメラが先走ったため切れています。
こういった失敗写真を残すというのは重要です。
次への改善につながりますからね。
ここは一般道路で制限速度も遅いのでトラックもスピードが出ません。
その分、シャッター速度を落とさないとスピード感が出ないので、少し難易度は上がりますね。
流し撮りを練習する際のポイント
先ほどの例のように練習は失敗だらけで構いません。
本番で成功すればいいのです。
ただ、闇雲に撮りまくるのはお勧めしません。
どれだけ撮影しても、間違った方法で撮っていたなら上達しないからです。
では、どういった点に注意しすればよいのか。
簡単ですが、練習時に気を付けるポイントをいくつか紹介します。
連写する
流し撮りは正直言って「数打ちゃ当たる」みたいなところがあります。
1枚だけ撮って、綺麗に流すのはかなり上級者といえるでしょう。
とにかく最初のうちは数を打ってください。
そして、撮影したものはパソコンで拡大して確認しましょう。
どういった角度が綺麗に写るのか、失敗が多いのはどういった場合なのか検証することが重要です。
カメラの動きをトラックのスピードに合わせる
これはとても重要な事です。
流し撮りの基本はトラックを止めて、背景を流すこと。
トラックも流れてしまっては意味がありません。
ファインダーを覗き、トラックの動きに合わせてカメラを振りましょう。
視点を1か所に集中させる
カメラを構えたら、視点は1か所に集中させてください。
これが、案外難しいのです。
ファインダー越しにトラックを追いかけた際、視点を動かすとカメラの動きもそれに合わせて変わってしまいます。
例えば、最初キャビンのドアに視点を合わせていて、撮影中に荷台のペイントに視点を移すなどの行動です。
先に説明したとおり、流し撮りは連写が基本です。
連写中に視点を動かすと、トラックの動きまで見失ってしまいます。
トラックの動きを見失うと、カメラの動きもトラックと合わなくなり、後はボロボロ。
被写体ブレ写真が連写されるのです。
手ブレ補正は切る
カメラやレンズに手振れ補正機能が付いている場合は、使用しないようにしてください。
カメラを振る動きに反応して、余計な補正がかかるためです。
また、機種によっては流し撮り用に1軸だけ手ブレ補正するものもありますが、これもあてにできません。
最初は、全て切るようにして練習してください。
ただ、慣れたらそういった機能を使うのも良いでしょう。
コンティニュアスAFとする
オートフォーカスはコンティニュアスAF(AF-C)としてください。
基本的に流し撮りをする被写体は動いていますので、カメラからの距離は常に変わります。
ですから、シングルサーボAF(AF-S)またはワンショットAFですと、シャッターが切れなかったりピンボケの写真となる可能性が高くなります。
当然、連写が途中で止まることもあるでしょう。
ですから、オートフォーカスはコンティニュアスAFが必須となります。
失敗は残す
流し撮りの練習は、いかに失敗を潰せるかがポイントです。
ですから、失敗した写真は必ず残すようにしてください。
失敗前提の写真ですからRAWで撮影する必要はありません。
jpgで十分です。
但し、拡大して確認できるよう最大画質で撮影してください。
例えばナンバーが読み取れるかとか、会社名が入っていたらその文字が読み取れるかというのは、写真のクオリティを確認するのに重要な部分となります。
ですから、失敗写真は最大画質で残すが正解なのです。
もちろん、失敗は残すだけではなく、これがなぜ失敗に至ったか?という事を確認することが最も重要になってきます。

さて、あとは行動に移すだけです。
出来れば交通量が多い道路が良いでしょう。
次から次へと被写体が来ますからね。
最初からトラックを狙うのは難易度が高いかもしれません。
乗用車で練習するのも一つの方法です。
とにかく体を動かして、覚えさせることが重要なのです。
健闘を!
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