流し撮りに重要なのは「被写体との適正な距離」その求め方について解説

撮影術

流し撮りとは

流し撮りとは躍動感やスピード感を表現する撮影方法のひとつです。

車などメインの被写体はブレないようにピントを合わせ、背景は流れるように撮影することによりスピード感を演出できます。

 

なんとなく分かっているようで分かっていない流し撮り。

前回まで、シャッター速度焦点距離構図(角度)の失敗例について解説しました。

今回はかなり重要な「被写体との適正な距離」について解説します。

 

被写体と適正な距離を取る必要性

前々回の記事で、失敗例として「広角レンズを使うから必要な部分まで流れてしまう」ということを説明しました。

なぜ広角レンズを使って撮影してしまうかというと、トラックまでの距離が近すぎるため望遠レンズを使うとフレームからはみ出してしまうからです。

 

これは、歩道から撮影する場合によく起こす失敗です。

対面道路はもちろんのこと、片側2車線の道路でも広角レンズの範囲です。

ですから、歩道から撮影している限りは、広角レンズによるブレから逃れることは出来ません。

流し撮りが失敗作になるそもそもの理由(焦点距離)
トラックに限らず、動く被写体を撮る人なら一度はチャレンジしたことがある流し撮り。 でも、思った通りに撮れないことが多いのです。 その仕組みについて理解し、理想に近づけていくか解説します。

 

この失敗を防ぐ方法として望遠レンズを使うことを推奨しました。

望遠レンズは画角が小さいため、レンズの中心部と周囲部の動きに差が無いためです。

 

しかし、望遠レンズは遠くの被写体を切り取る分、被写体から離れる必要があります。

では、どのくらい離れれば良いのでしょうか?

簡単な計算で求めてみます。

 

綺麗に流すなら200mmぐらいが良い

被写体は、長ければ長いほど流し撮りが困難になります。

それは前回説明した撮影角度の問題。

同じシャッター速度でも、車体が長ければ長いほど動きが大きくなるため被写体ブレが目立ちやすいのです。

 

ですから難易度は、

 トレーラー>10t>4t>2t>乗用車

といった感じです。

まあ、あくまで目安ですので、実際の長さで考える方がいいです。

同じ4tでも、オバケとダンプでは全く違いますからね。

 

レンズの焦点距離はフルサイズで200mmぐらいが使いやすいです。

これが100mm前後ですと車体後部がブレやすいですし、300mmぐらいになると取り回しが難しくなります。

 

ただ、これは個人の好みや技量もありますので使いやすい焦点距離を使ってもらえば良いと思います。

 



 

200mm望遠レンズを使う時に必要な距離

望遠レンズを使う場合は被写体から離れないと、全体を写しきることが出来ません。

では、どのくらい離れる必要があるか計算してみましょう。

 

まず焦点距離200mmレンズ水平画角は約10.29°です。

これはレンズの仕様書にものっていますし、下記のような簡易計算帳票でも計算できます。

 

 ◆keisan!カメラの画角計算

 

あとは三角関数で距離が求められます。

例えば、

 焦点距離は200mm(水平画角約10.29°)

 長さ12mのトラックを撮影

 トラックの前後は1mずつ余白を入れる

このような条件にすると以下のような図になります。

トラックは前後の余白を入れると14mです。

ですから底辺8m頂点が5.145°(10.29°の半分)の直角三角形が出来上がります。

 

あとは三角関数を使い垂線の長さを求めるだけ。

計算すると77.74(m)となります。

 

かなりの距離が必要なのが分かりますね。

片側2車線の見通しが良い道路でも幅25mぐらいしかありませんから、その3倍は必要です。

トラックの流し撮りで、場所探しが如何に難しいかお分かりいただけるでしょうか?

 

参考までに、他の長さのトラックや、他の焦点距離についても計算できるように計算式を書いておきますね。

Excel用の計算式ですので使ってみてください。

 

=TAN(RADIANS(90-(レンズの水平画角/2)))*余白を入れたトラックの長さ/2

 

今回の場合、

 レンズの水平画角 10.29

 余白を入れたトラックの長さ 14

となります。

 

 

流し撮りは場所探しとの戦い

実際にトラックの流し撮りが出来る場所は非常に少ないです。

今回の適正な焦点距離200mmという条件を加えると、

 道路から80m前後の位置

 道路までの遮蔽物(植栽やガードレール)が無い

 撮影に安全な場所

 ある程度スピードの出る道路

となります。

 

条件はかなり厳しいと思いますが、そういった場所を探すのも撮影の醍醐味です。

一度調査してみると良いでしょう。

 

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