流し撮りとは
流し撮りとは躍動感やスピード感を表現する撮影方法のひとつです。
車などメインの被写体はブレないようにピントを合わせ、背景は流れるように撮影することによりスピード感を演出できます。
なんとなく分かっているようで分かっていない流し撮り。
前回はシャッター速度について解説しました。
でも、失敗の理由はそれだけではありません。
今回は焦点距離にスポットを当て、どうやったら綺麗に流れるのかコツを解説していきます。
想像は出来るけど奥が深い
流し撮りは手ブレと似ているという話をしました。
大まかには、被写体がブレるか、背景がブレるかの違いです。
こう書くと、多くの人がどうやれば流し撮りになるのか想像できているでしょう。
とっても簡単なことです。
被写体と同じスピードで同じ方向にカメラを動かせばいいだけのことです。
被写体は動いていることが前提ですね。
止まっている被写体では流し撮りが出来ません。
ただ、想像しているよりも奥が深いということを頭においてください。
流し撮りが失敗作になるそもそもの理由(その2)
さて、今回は別方向から撮影しています。
案外この失敗が一番多いのではないかと個人的に想像しています。
早速、道路を走っているトラックを撮影してみました。
前回と同じく、トラックにカメラを向けて進行方向に向かってカメラを動かしています。
もちろん、前回説明したとおりシャッター速度はレンズの焦点距離と比較して遅くしました。

はい、もう全体的にブレブレですね。
でもよく見るとこの写真、ちゃんと流し撮りになっているんですよ。
流し撮りは被写体を止めて背景を流すとスピード感のある写真になります。
では、この写真が流し撮りと言えるのは止まっている部分がちゃんとあるのです。
どこかというとコボレーンの付け根あたり。
拡大しますね。

ほら、ちゃんとピントが合って止まっているでしょ。
背景が流れて、止まっている部分がある。
これも流し撮り・・・って納得しないですよね。
何でこうなるかは理由があります。
問題はレンズの焦点距離
この写真の最大の問題は広角レンズで撮影していることです。
片側2車線道路の歩道から撮影していますから、焦点距離は28mmぐらい。
焦点距離が50mmより短いものですから、広角レンズとなります。
では、なぜ広角レンズが問題になるのでしょうか?
図で説明しますね。
今回使用しているのは28mmレンズですので、画角は75°、図で表すとこんな感じです。

青の実線がレンズの中心線
青の点線がレンズの画角(写しきれる範囲)
白の四角が被写体(この場合はトラック)
分かりやすいように、画角めいっぱいでトラックを写していると仮定しますね。
ここで流し撮りをするとどうなるか?
流し撮りはシャッター速度を落とすことになりますので、シャッター幕が開いてから閉じるまでにトラックが移動します。


2枚の写真を見比べると、違和感に気が付くかもしれません。
どちらも、被写体(トラック)の中心部分を追いかけて撮影しているのですが、青の点線(画角線)の位置が変わってしまっていますね。
ここがポイントです。
見やすいように色を付けてみましょう。

トラックの前方を見てください。
中心の移動速度に対してトラック前面の速度が遅いこと(黄色で塗った部分)が分かります。
トラックの後方を見てください。
こちらも、中心の移動速度に対してトラック後面の速度が遅いこと(水色で塗った部分)が分かります。
この、中心と端部の移動速度の差が余分なブレを生んでいるのです。
ですから、トラック全体を綺麗に流そうと思うなら、広角レンズを使うことは相応しくないのです。
あえて、こういった表現を狙うなら別ですが・・・。
解決策は望遠レンズを使う事ですが・・・
この問題を解決する方法は一つだけです。
望遠レンズを使う事。
先ほどの28mm広角レンズの画角は75°でした。
画角が広いために中心部と端部の速度差が出るのです。
そこで画角の小さい望遠レンズの出番です。
例えば200mm望遠レンズなら画角は10.29°ですから、端部の速度差はほとんど誤差になります。
実際に撮影してみると分かるのですが、その差は歴然。

但し、望遠レンズを使って流し撮りが出来る場所は限りなく少ないです。
条件としては、
ガードレールや植栽等、邪魔になる物がない事。
道路まで見晴らしがよく、遠くから撮影できる事。
ある程度、スピードを出せる道路であること。
この3点なのですが、実際に探してみると、そんな場所はほとんどない事に気づかされます。
技術はあっても場所がない。
それが流し撮りを困難にしている要因ではないかと考えます。
歩道に立って、道路上の走るトラックを流し撮りするのは、距離的に無理と覚えておきましょう。
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